はれのち 創刊号(2017年2月)

株式会社神奈川機関紙印刷所(きかんし印刷)が発行する広報誌です。


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姿かたちは十人十色 講習では最初に一つの木切れと図面が渡され、2体の仏様が台座の部分で対になるように下書きをする。のこぎりや彫刻刀で完成の手前まで平行して彫り進め、いよいよお顔をつける段階で切り離す。仕上げにハゼの実からとったロウを塗り、錫杖と巻物を持たせ、完成。切り離された一体は大船観音の胎内に納め、一体は受講生が持ち帰ることができる。多くの人に彫られた仏様は、それぞれに顔つきや体つきが異なり一つとして同じものはない。平和への思い 千体仏無料講習の取り組みは、戦後50年目の年から横浜の木彫家・植草等雲により始められた。太平洋戦争で亡くなった人々の供養と平和への願いが込められている。手のひらにのる小さな仏様はたくさんの人に彫られ数が増えてゆき、納め先を探していた。縁あって大船観音寺の観音様の胎内に納めることになったのは2011年4月のこと。原爆の火が灯る大船観音寺に千体仏を納めることができ、幸せだと語る。大船観音寺に納めるようになって以来、参拝者の目に触れ、無料講習の受講生が急速に増えた。当初900体ほどだった仏様は今では1300体を超すという。千体仏の〝千〟とは無限に多いという意味だ。ずらりと並んだ仏様の中には大日如来、阿弥陀様やキリスト様、マリア様の姿もある。宗教は問わないのが等雲のスタンスだ。健康である限り活動を続けると木彫家は語る。取材で感じたあたたかさ 初日、開始から1時間足らずで、子どもの体調不良で保育園から連絡がありとんぼがえり。そのため本来は2日間の日程の講習だったが、今回の取材では3日間を費やした。最終日の帰りには雨に降られ、傘を貸してくれた。ばたばたしっ放しの記者に、最後まであたたかく接してくれた講習担当者の存在は印象深かった。 そんなこんなで彫り上げられた仏様の片割れは今、記者のデスクPC本体の上に佇んでいる。真剣に作業する受講生願いこめ彫るマイ仏様受講生の千体仏の仕上げをする植草等雲氏 11月21日、曇り空のもと大船観音寺を訪れた。千体仏無料講習の最終日だ。等雲伝統木彫技術協会横浜市中区麦田町1-2 ☎045-227-4266HTTP://TOUUN-WOOD.O.OO7.JP/5 はれのち NO.1


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